SXSW 2012 雑感 – Embrace the madness!

先だって3月9日から16日までの一週間、SXSW 2012 に行ってきたので、その簡単なレポート… というよりはすごく私的な「体感記」を書いてみたいと思います.

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SXSW(south by southwest – http://sxsw.com/)はテキサス州オースティンで開かれている音楽と映画、そしてインタラクティブのフェスティバルです(今年は9日から18日に開催). 2007年のTwitterをはじめとしてたくさんのWebサービス/アプリを世に送り出したSXSWのインタラクティブ部門(SXSWi )に参加するのが主な目的です.

今回はじめて参加(というか視察、いや遊びにいっただけという話も…)することになったわけですが、一週間を通して、とにかくセッションが多くて、もうほんとに目が回るような体験でした!

全体を通して感じた印象を単語で表すとしたら「アマルガム」「カオス」「熱気」 そんな感じでしょうか.

なにかよくわからないものがごちゃっと混ざり合って、すごい熱を発しているというか…  音楽にしろ、IT系のサービスにしろ、まだEstablishされていないもの、まだ海のものとも山のものともわからないものをおもしろがる感覚が一貫して感じられました. その辺はもともと、インディーの音楽のフェスティバルだったというSXSWの出自そのものが影響しているのでしょう.

全体の雰囲気を一言で表してるのが、このTシャツ!! 空港などでもお土産として売られているもので、オースティンの街のモットーだそうです.

“Keep Austin Weird”

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「Wired」ではなくWeird=(ウィアード)変な、奇妙な」である点に注意. ようするに変な街、不思議な街、他と違う街でありつづけようぜ!! というスローガンなんだと思います. さらにとあるバーに入ったら、そこのバーテンダーたちがみな、“Embrace the madness” というTシャツを着ていました. それもまたSXSWの精神をうまく表しているような気がしました.  変、奇妙、極端に言うと狂気 人と違うということを大事にする、それが新しいものを生み出すチカラになる. そんな認識がなんとなく共有されてる感じが一番印象に残っています.

以下、一週間の滞在の感想を各部門ごとにつらつらと書いてみたいと思います. (写真をもっとちゃんととっておくべきだったと反省しつつ…)

インタラクティブ部門

メイン会場のAustin Convention Centerとその周辺のホテルの会場を利用したキーノートスピーチ、プレゼンテーションやパネルディスカッションなどのカンファレンスが中心です. Convention Centerでは、さまざまなサービス/商品の見本市が開かれているほか、企業のブース、テントなどが街の半径2, 3kmのなかに点在しています.  さらに、ミュージック部門はライブハウスなどでのアーティストのライブ、フィルム部門は参加作品の試写などがあります.

Austin Convention Center
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数千人が入る巨大な会場でのキーノートスピーチ. 今年はAl Gore, TwitterのBiz Stone, 映画Social Networkで有名なSean Parkerなどが登壇.
写真は科学者で発明家、未来学者のRay Kurzweilのキーノートスピーチ(サンプラーの発明家としても有名). 著書 Singularity is Nere (邦題: ポスト・ヒューマン誕生―コンピュータが人類の知性を超えるとき)の内容を中心に人工知能やネットワークによって拡張される人類について話してました. ちょっと話が冗長すぎたのと、対談相手がいまいちで後半はかなりだらけてしまった感あり.
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一方、数十人単位でのディスカッションのセッションが多いのもSXSWの特徴ではないでしょうか. 数人のパネラーに参加者が質問をぶつけるかたちで議論が進んでいきます.
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面白かったのは Ogilvy Notesという仕組み. 大きな会場でのトークではステージの前に人がいて、絵を描いている人がいます. 最初はクラブイベントなどでよくある、ライブペインティングをやっているのかと思って、さすがにSXSW! と勘違いをしたのですが… 実際は視覚的に講演内容を要約するノートを取っていたのでした. Live Paintingならぬ、Live Visual Note Takingとでも言えばよいのでしょうか (写真は最初に宇宙飛行を実現した私企業に1000万ドルの賞金を出すとして有名になったX Prizeの創始者のPeter Diamondisの講演のもの)

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SXSWでの講演のNotesはこちらにすべてまとめられています. これをさらっと眺めるだけでも雰囲気が伝わってきてインスパイアされるような気になりませんか?
http://ogilvynotes.com/49790/sxsw-2012

■ share, social, location …

改めて言うまでもないとは思いますが、これらのキーワードがインタラクティブ部門の軸になっている感じです. 特にモバイル系のアプリ/サービスはほとんどがこのキーワードで表現できるものでした. 何を(写真、イベント情報、コンタクト …) 、あるいは何を通して、どういったきっかけで(ロケーション、共通の興味…)シェアするのかでいろんなバリエーションがあるだけで、ほとんどが「share」に軸足を置いています.

今回のSXSWiで目立っていたのは、shareの触媒として「location」=位置情報を使うというアイデアです. 近くにいる人と○○をshareする… あるいは、近くにいる人の中から友人/興味関心をshareしている人を探すアプリというのを、10個くらい見かけたような気がします.

関連記事: Huffington Post – SXSW 2012 Apps Buzz Is Location, Location, Location
http://www.huffingtonpost.com/2012/03/11/sxsw-2012-apps-buzz-is-lon1337696.html

個人的にはGlancee – Facebookの情報とGPSを使って共通の友人・興味を持っていて、かつ今、自分のちかくにいる人とつながれるサービス – が面白かったですね. 特に場所柄もあって、立ち上げて歩いているだけでいろいろな人とつながれる感じがありました. 同様のサービス Highlight もかなり話題になってます.

ロケーション・データの持つ可能性については、キーノートの一つ Amber Caseの”Ambient Location and the Future of the Interface”も要チェック! SXSWのオフィシャルサイトで録音されたキーノートを聞くことができます.
http://schedule.sxsw.com/2012/events/event_IAP992057

また、SXSWらしくクラウドソーシング的なレポートとしては次のようなものが
lanyrd.comの講演情報のまとめ
Storify – ソーシャルネットワーク上の情報をまとめたもの. (StorifyはSXSWのカンファレンスでも幾度か紹介されてました)

あと、これは2010年からあるサービスのようですが、SXSWで使えばよかったと後悔しているアプリがGroupMe. グループを簡単につくってclosed (openにもできる)な掲示板/チャットルームがメッセージのサービス. 友達数人で夏のロックフェスに行く!なんてときにはホントに使い勝手がよさそうです. これからどこいく?どのステージが面白い? なんてときには便利なのではないでしょうか.

もう一つ重要なトピックはiOS, Androidそれぞれにあわせたネイティブアプリ、HTML5を使ったユニバーサルなWebアプリ、どちらが今後主流になるかという話題. 詳細は省略しますが、高度/特殊な処理が必要だったり計算の負荷が高いアプリやゲーム以外は、さまざまな分野でWebアプリがより増えていくのではないかという方向で議論が展開されていました.

これらのモバイル系のサービスに関しては、すでにいろんな媒体でレポートがでているので、そちらをご参照ください.

Hottest new apps out of SXSW 2012

2012年SXSWの注目アプリ—Twitterやfoursquareに続くか? – CNET Japan

Must-Have Mobile Apps At SXSW

話はそれますが、個人的に好きだったのはメキシコの会社の Taco’s Taco というタコスのメニューをシェアするだけ(excuse me!)の無料アプリ. どうやってお金をだしているのか、さっぱりわからないのですが、Convention Centerの目の前の一等地に大きなテントを出して、タコスとテキーラを大盤振る舞い! こんなに気前よく飲ませてもらって大丈夫なのかと、こちらが心配になってしまいました.

ただ、二日ほどSXSWに参加して分かったのは、タコスのテントのただ飯、ただ酒が実はSXSWのコアにあるということ。結局はご飯やお酒に中心に人が集まり、そこでコネクションが生まれて、ビジネスが回って行く…   そんな単純じゃないだろという突っ込みが入るのは分かっていますが、意外と重要なのではないでしょうか.

自分の場合、いっしょに行ったメキシコ人の友達 オスカー (後述)がCNNの友人を紹介してくれて、CNNのプライベート・バーに入れてもらって、ただビールを飲んでたら(Austinで飲んだfree beerのなかで一番うまかったかも)、InstagramのfounderのKevinととなりの席になって話ができて…. ってな具合でした. もちろん、そこからすぐにビジネスになるわけではないんですが、こうやってネットワークを作っていくんだろうな、というのとそのスピード感を体感できたのは自分にとって大きかったように思います.

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free lunch, free beerに並ぶ人.
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Microsoft / bingのバーとNike Fuelband色に染まったビル.
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街や会場を歩いているととにかく声をかけられます. 「こんなアプリを作ったんだけど」「新しい写真を使ったサービスだよ!」とにかくみんな自分の作ったもののセールストークをしようと待ち構えています. いろんなチラシをもらったり、おまけをもらったり… ほとんどがいらないものだったりするのですが(笑 2007年にはTwitterのスタッフが「140文字でつながる超シンプルなwebサービスはじめたんだけど…」といって、フライヤーを配っていたとか. その逸話を知っているだけに、「この人も5年後にはひょっとしたら大金持ちになってるかも」なんて思いながら、話を聞いてました. そういうある種の「雰囲気」があるのが、SXSWの魅力なんでしょうね.

■ for start-ups

ベンチャー企業の経営者やこれから起業しようとしている人たち向けの啓蒙的なセミナーもいくつかまわってみたのですが、どれも盛況でした. 特に個人的に面白くて参考になったのは次の二つの本の著者のセッション.


“リーン・スタートアップ  ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす” (エリック・リース)

アメリカでは相当話題になった本らしく、起業家のバイブル的な本とのこと. スタートアップに必要な会社のマネージメントについてのかなり具体的なアドバイスが載っています.



“The Start-up of You: Adapt to the Future, Invest in Yourself, and Transform Your Career” (Reid Hoffman, Ben Casnocha)

LinkedInのfounderが書いたキャリア作りの啓蒙書. 自分自身をある種のスタートアップだと思って行動することで可能性が一気に広がるよ、という話. 帰りの飛行機で一気に読んだのですがすばらしい本だと思いました. 願わくば学生のときに読んでおきたかった.

■ big data, それとも too much data?

もうひとつ、これは僕の印象ですが、ロケーションとならぶ隠れたもうひとつのトレンドとして、「データの持つ意味の質的な変化」が隠れていたのではないかと思います. モバイル端末やソーシャルネットワークの進化に伴って、日常的に接する、あるいはシステム側に蓄積されるデータの量が指数的に増えている… さらに、その量の変化が質の変化につながっていることを肌で感じました. さらに具体的に言うと、データ量の増大をシステムの側から見て肯定的にとらえる立場、その反対に一般ユーザの立場から否定的にとらえる立場が水と油のように同居している状態です.

前者の立場は、いわゆるbig dataやdata visualizationといった単語に代弁されます.

big dataとその可視化 (data visualization)によるストーリーテリング、データによる企業ブランディング(Honda Internaviのdotsなどを思い出しました) といった話題から、SNS上のデータを使ったマッチングサービスの科学 (日本のいわゆる出会い系とは違って、アメリカのdatingサービスは有名大学で数学のPhDをとったような人が起業していたりしていて、本気度が伝わってくるものが多かったりもします)についてのセッションなどなど

Data Visualization and the Future of Research

Maps of Time: Data As Narrative

一方、データに対する後者の立場を一言で言うとしたら、“TOO MUCH!” でしょうか. (Googleでsxsw too muchで検索するとたくさんhitしたのが象徴的)

AP通信 In shadows of hype, dialogue of ‘too much’ at SXSW
“Too much” was a phrase often uttered not just about the rising crowds of some 20,000 SXSW interactive attendees, but of tech advances into daily life.

関連して、プライバシーとデータの所有権(Facebook上にアップロードした写真や位置情報は誰のものなのか?)についての議論も活発でした.

ミュージック部門

ミュージック部門が始まると、SXSWの雰囲気ががらっと変わります. シリコンバレーにいそうな眼鏡をかけてTシャツ、ジーンズでちょっと小太り(失礼)みたいな人が減って、若くておしゃれな人が増えてくる感じ. 明らかに男女比も変化していきます(笑 カンファレンスではなく、単純にライブやパーティーを楽しみにきている近隣の大学生も多いからでしょうね.

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イメージはオースティンの街全体を使った超巨大なブロックパーティー! Fuji Rockのステージ数を10倍にしたものを渋谷の街で開催してるような感じでしょうか. もともとライブハウスがが多いオースティンの街で、とにかくありとあらゆる場所でライブをやってました. お客さんが 30-40人程度の小さい会場が中心です.

こちらもたくさんありすぎてとても全部見れなかったのですが、SXSWでたまたま出会ったバンドで面白かったのをいくつか紹介します.

- Tycho

SFベースの3ピースのバンド. 人力キモチイイテクノ. たまたまバックでジョージ・グリノーの”CRYSTAL VOYAGER”というカルトなサーフムービーが映っていたのですが、まさにエレクトリックなサーフミュージックという感じで気持ちよくトランスできる音楽.

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Electric Wire Hustle

NewZealandの音楽のショーケースでたまたま出会ったこちらも3Pのバンド. ドラムがバカうまの上にボーカルがいい! MPCなどの機材の使い方もうまくて、今っぽいバンドだなと. ライブ後にワインを片手にステージわきでうろうろしているボーカルの人と話す機会がありました. すごいフレンドリーなナイスガイ. 日本にも行きたいから呼んでくれと言ってました.

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こじんまりしたライブ会場が多いSXSWならではといったところですが、一方では、Jay-Zなどの超大物のライブも平行して行われていました. 今年は50 cent, Eminem, Kanye West, Nasなどのヒップホップの超大物が多数集結ということで、HipHop好きにはたまらない顔ぶれだったのではないでしょうか.

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とにかく深夜までお祭り騒ぎは続きます

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フィルム部門

時間がなくて、フィルムまではさすがに詳しくチェックできなかったのですが… インタラクティブ部門を観に行った人が興味をもちそうなフィルムを二つご紹介.

Welcome to the machine

Ray Kurzweil, Jaron Lanier, Kevin Kelly, Rodney Brooks, Sherry Turkle… 出演者の顔ぶれもすごい. 上のtoo muchという感覚とも共鳴しています.

Indie game developer

■ 全体を通して

今年のまとめ – さらに詳しく知りたい方は下記をチェックしてみてください.

lanyrd – SXSW 2012 – 講演のスライドや録音など
http://lanyrd.com/2012/sxsw-interactive/

OglvyNotes 2012 – キーノートのビジュアルメモ
http://ogilvynotes.com/49790/sxsw-2012

Storify – ソーシャルメディア上の情報で語るSXSW
http://storify.com/search?q=sxsw+2012

来年はぜひ行ってみたいというみなさんへの簡単なアドバイスを最後に!

1. 早めにホテルを押さえる

僕が泊まった部屋はツインで一泊300ドルくらいしたのですが、マネージャーに聞いたところによると普段は70ドルくらいの部屋だそうです (マネージャーさん、正直者すぎです) それでも、すぐにホテルが埋まってしまうので、少なくとも2ヶ月くらい前には押さえた方がよいかと思います. かくいう僕もホテルがとれず、たまた日本で久しぶりに再会したメキシコの友達がとっていた部屋に泊めてもらってなんとか参加しました(後述)

2. オフィシャルサイトはあてにしない

参加する前にsxswのオフィシャルサイトをチェックすることになるわけですが、このオフィシャルサイトがあまり役に立たない、ということが今回よくわかりました. 網羅的にすべての情報が掲載されているため、あまりにイベント/セッションが多すぎてどこをみてよいのか途方に暮れてしまったというのが実感です. まずはkeynoteの顔ぶれをチェック, 面白そうなセッションを見つけたら、その人の名前 + sxsw + previewなどで検索すると、sxswの見所をまとめた新聞記事などが見つかります。そこから関連するセッションへのリンクをたどっていって、見たいセッションをピックアップするのがよいのではないでしょうか.

3. ミュージック部門はラジオ番組が役に立つ

音楽も同様にオフィシャルサイトはあてにしないほうがいいです. 参加アーティストが多すぎてどこから見ていいのか訳が分からなくなってしまうのがおち. NPRなどのアメリカのラジオ局ではsxswの事前特集を放送しています. またsoundcloudなどで、sxswを検索するとやはりだれかが集めたsxswで注目のアーティストのコンピレーションなどを聞くことができます. ラジオDJなどの耳を通してフィルターされたアーティストを中心にチェックしていくと良さそうです!

NPR: SXSW 2012 Preview
http://www.npr.org/2012/03/06/147964366/sxsw-2012-preview

4. 友達の力を借りる

それでも、全部のセッションを事前にチェックするのは不可能です. そこは友人の力を借りることにしましょう. グループでチャットできるような仕組み(たとえば上記のGroupMeなど)を事前に用意しておいて、友人同士で常に面白そうなセッション(あるいはパーティー)の情報などを共有することです. まぁ、これはSXSWに限った話ではないですね.

SXSWは観に行くものじゃなくて感じに行くものです. ぜひ来年はみなさんもあの狂気に浸りに行きませんか!
僕も来年は展示 or 発表者として今度こそ本当の意味で参加してみたいと思ってます.

■ 最後に

ホテルがとれなかった僕を快く泊めてくれたオスカーに感謝! 彼と一週間ずっとフェスティバルをまわってました. 彼がいろいろな人を紹介してくれたおかげで、刺激的な一週間を過ごすことができました. 北野武の映画が大好きというオスカー、僕が何か言うと、「なんだと、コノヤロー」「うるせぇー、バカヤロー」というのには閉口しましたが… 笑 それも含めて最高の一週間でした!

Mi amigo Oscar. Mucha Glaciaus!!
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